2013年10月15日 第11回墓参訪朝報告会 説明会(東京)
今年最後の墓参訪朝を翌週に控え、第11回目となる墓参訪朝説明会が開催された。10年に1度の超大型台風が接近する中、総勢60名弱が参加。拉致被害者家族会前代表の横田滋氏や調査団の水野教授も駆けつけて下さった。

1.主催者挨拶
北遺族連絡会 代表幹事 正木 貞雄
2. 来賓挨拶
参議院議員 浜田 和幸 様
拉致被害者家族会
前代表 横田 滋 様
拉致被害者家族会
前事務局長 蓮池 透 様
一水会代表 木村三浩 様
3. 調査団訪朝報告
北遺族連絡会諮問委員会代表
京都大学教授 水野 直樹
4. 墓参訪朝ドキュメント放映
5.墓参訪朝参加者からのご報告
ご遺族 大前悦宏 様
ご遺族 長尾周幸 様
6.事務局よりお知らせ
【来賓からの挨拶】
臨時国会の初日とかなさり多忙を極める中、参議院議員の浜田和幸先生が駆けつけて下さり、自らのロシア、ウクライナ等への訪問について、「中国や北朝鮮とつながりのある国々と、東アジアにおける安全保障に関し議論をしてきた」と報告。北朝鮮についても「金正恩第一書記の動きに新しい傾向がみられる」と指摘し、「臨時国会で、今後の日朝関係の在り方について真剣な議論を重ねていきたい」と、抱負を述べて下さった。
続けて、拉致被害者である横田めぐみさんの父、滋さんが挨拶。「遺骨問題と拉致問題は、どちらも人道的な問題として同時並行で取り組むべき」と切り出し、拉致問題に関し何ら進展が見られないことに対し、「めぐみも、当時13歳だったのが、この前の誕生日で49歳になった。他の被害者も同様に歳を重ねている。事態の改善に向け、政府にはもっと真剣に動いて頂きたい」と、もどかしい思いを吐露した。同じく拉致被害者である蓮池薫さんの兄、透さんも、「本日10月15日は、弟をはじめとする拉致被害者5人が帰国した日。あれから11年が経ってしまい、20歳で拉致された弟はすでに57歳になった」と、時間ばかりが過ぎていく現状に苛立ちを見せ、「北朝鮮が協議を求めているのであれば応じればいい。日朝間の対話が必要だ。その中で信頼関係を作ることで、拉致問題にも切り込んでいけるのではないか」と訴えた。滋さんは最後、「皆様の遺骨の収集や墓参についても、もっと自由がきくようになるよう、願っています。お互い立場は違いますが、一緒に戦っていきたいので、どうぞよろしくお願い致します」と深々と頭を下げた。
最後に、一水会の木村代表が、遺骨問題と拉致問題の解決の必要性について語気を強め語った。「もう時間がない。外国に残留している日本の軍人、軍属、民間人のご遺骨は何としてもご帰還させなければならないし、犯罪行為としての拉致に関しては、一日も早く生存されている方が帰国できるよう訴えていきたい」。そして、「この連絡会も、説明・報告会を11回も開くところまで来た。何としてもこの活動を続け、日朝間のパイプの一つとして諸問題解の糸口となっていってほしい」と希望を語った。
【水野教授による現地報告】
はじめに、テレビで放送された調査団訪朝に関するVTRを放映。その上で、調査で感じたことについて水野教授がコメントを述べた。
「我々が正確な場所を把握している墓地、埋葬地は10か所程度だが、戦後厚生省がまとめた資料には、全部で約70か所の墓地があると記されている。残りの墓地がどこにあるのかを今後調べる必要があると感じている」とした上で、「第一に、引き揚げ者の手記と、日本政府が保存しているはずの資料を調べる必要がある。第二に、三角山の麓のように、埋葬地だと推定出来る場所でも、立ち入ることができない場合が多い。今後、朝鮮側と交渉して、そういった場所にも墓参が出来るようになればと思う。第三に、文献からの資料というのは推定にとどまる。ピンポイントでここだと特定するためには、現地に行ってその場所を見なければならない。そのためには、過去のことを記憶している現地の方々の話を聞くことが必要。そのためにも、朝鮮側と協力し、この問題について協議する姿勢が必要だろうと感じる」と述べた。
最後に、「私も、時間がないと感じる。昔のことを覚えている方々が亡くなっていっている。このままでは日本人の墓地がどこにあるか分からなくなってしまうのではないかと心配している」と強い危機感を示し、日本政府として、日本人の埋葬地がどこにあるかだけでも、手始めに調査をするということが緊急に必要だと訴えた。
【ご遺族からのお話】
9月18日からの墓参には7名のご遺族が、その後行われた9月30日からの墓参には1名のご遺族が参加された。そのほとんどの方が、悪天候の中、会場に足を運んでくださった。大前悦宏さんと長尾周幸さんより、ご挨拶を頂いた。
大前悦宏さん
「年齢的な問題も家族からの不安の声もあったが、参加を決断。会寧という、報道陣も始めて入るところに 墓参に行った。姉が埋葬されている場所については、何度も捜査をしたがわからないということだった。しかし、この小さな体であの地に立った時、豆満江があり、飛行場があり、緑の山ときれいな川がある当時の様子が、パーッと記憶に蘇った」「また、現地に行き、朝鮮のイメージも180度変わった。地方で、青年からお年寄りまで、皆が姿勢よく生き生きと生活されている姿を見て元気を頂いた」
長尾周幸さん
「7年間過ごしていた平安北道の地に入り、妹の遺骨を荼毘に付したところに案内してもらうことができた。想いを果たすことが出来て嬉しい。現地で小さな石ころをたくさん拾って持ち帰ってきたので、いずれお墓に入れてあげたいと思う。」「現地の川にかかる鉄橋を見た瞬間、小学校時代にこの鉄橋を渡った記憶がよみがえった。しかし、駅とその周辺は昔とは様変わりしていて、浦島太郎のような感覚を持った」
【事務局より】
今月23日~29日に今年最後の墓参訪朝が行われる。その後、報告会を行う予定。12月には総会も予定している。また、まだ墓参訪朝を希望されている方が多いので、朝鮮側等と打ち合わせをした上で来年の予定をまたお知らせする。


