皆さん、こんにちは。今回の説明会は、すでにご案内致しましたように、ここ新潟で行うことに致しました。
周知の通り、新潟は、蓮池さん、曽我さん、そして、今なお帰還を果たせないままの横田めぐみさんが拉致された場所です。このような因縁の場所で、私たちは北朝鮮へ渡航するための説明会を行っております。多くの方にお叱りを頂くかも知れません。どうかお許し下さい。
どんなにお叱りを頂いても、私たちは行かなければなりません。私たちは、戦後の混乱の中、肉親や友人知人の屍を放り出して逃げ帰って参りました。みんなが十字架を背中に背負っております。この大きな罪を償わずして、残り少ない命を全うすることはできません。拉致被害者やそのご親族の心境はいかばかりかとお察し致しますが、それを以て「あの国を潰してしまえ」「圧力をかけよ」と叫ぶ政治家やマスコミに対して、本当にそれでいいのかと私は疑問に思います。国家によって引き起こされた不幸なできごとを、また、国家によって憎しみを増幅させてしまう、そんな繰り返しが許されるわけがありません。
そんな中、先ごろ内閣参与の飯島さんが訪朝されました。長い間圧力政策一辺倒だった安倍内閣が対話政策に転じたものと、大変大きな期待を致しております。北朝鮮を取り巻く国際情勢が厳しくなる中、我々墓参団の訪朝もあわやおしまいかと危惧されましたが、この飯島訪朝によって救われたような気が致します。飯島さんが北朝鮮の偉い方と会ってどんなお話をされたか知りませんが、とにかく対話が実現したわけです。飯島さんご本人も「拉致問題は解決する」と充分な手応えを感じておられるようですし、安倍総理は「私の政権で解決する」と明言しておられます。大変心強く頼もしい限りです。拉致被害者やご家族の方々にとっては、待ちに待った朗報でしょう。ただ、この問題はそうそう簡単な問題ではありません。今まで北朝鮮は「拉致は解決済み」、日本は「拉致被害者全員の帰還が解決」と真っ向から対立してきました。この大きな溝を埋めるのにどんな奇策が講じられるかは知る由もありませんが、私たち庶民は信ずるより他ありません。まさかとは思いますが、政権トップの言葉が選挙用のパフォーマンスでなければと、フト脳裏をよぎります。
2013年5月30日 第7回墓参訪朝説明会(新潟)

正木貞雄 代表幹事
私は、清津の出身です。横田めぐみさんが拉致されて最初に連れて来られた場所です。昨年清津に参りましたおりに、めぐみさんがそのあたりにいるのではないかとフト見渡してしまいました。次の墓参団も清津に参ります。皆さん同じ気持ちではないかと思います。私たちは、拉致被害者全員が元気で帰還されることを心から願っています。ただ現実がそれを許してくれなかった場合も、私たちのとるべき道は「友好」以外にありません。敵対国家である日本人の遺骨を70年近くも後生大事に見守ってくれている北朝鮮の人々がいる。清津では「なぜもっと早く来なかったのか」と現地の人にお叱りを受けました。そんな心優しい清津の人々が、もし、めぐみさんを見つけたら放っておく訳がありません。きっと私たちに耳打ちしてくれるでしょう。「圧力」や「強い政策」で訪朝ができなくなれば、そんな淡い期待すら叶わなくなります。私たちは、国家の仮面をかぶっていがみ合っていてはいけません。仮面の下は同じ人間です。痛みを分かち合い、協力しあってこそ友好が保たれるのです。説明会を行う度に申し上げておりますが、私たちは、「ジジイババアの友好使節団」だと、北朝鮮の地に眠る多くの犠牲者の魂がそう叫んでいます。そして、同じ過ちを繰り返してはならないと叫んでいます。
いよいよ、6月14日に出発致します。緊張後初めての訪朝です。同行するマスコミ関係者の方々は、さぞや墓参以外の事情に多くの興味を持たれることと思いますが、決して逸脱することの無いよう充分にご配慮をお願い致します。
簡単ですが私の挨拶に代えさせて頂きます。